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海底の洞窟の向こうに…
~テクニカルダイバーの挑戦~
MBS VOICE 2000/11/28 .O.A


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真っ暗な海底洞窟を行くダイバーたちがいる。充分な訓練を受けた者しか、この世界に足を踏み入れることはできない。「テクニカルダイバー」…、ダイビングの限界に挑むエキスパートだ。



 ▼ 日本初の女性テクニカルダイバー
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松本貴美枝さん


和歌山・紀伊大島。大阪でダイビングのインストラクターとして働く松本 貴美枝さん(29)。海が大好きでダイビングを始めて6年。おととし、TDI(テクニカル・ダイビング・インターナショナル)というアメリカの指導団体から、日本初の女性テクニカルダイバーとして公認された。
普通のレジャーダイビングでは洞窟に潜ったり、40メートルより深く潜ったりすることはない。しかし、テクニカルダイビングは、その名前のとおり、上級のテクニックを使ってあえて、厳しい条件の場所に挑むダイビングなのだ。



 ▼ 誰も入ったことのない世界へ…
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コウモリがいっぱいの洞窟


洞窟の中を潜っていくとこんな場面に出会うこともある…。
海面から顔を出し、真っ暗な洞窟にライトをあてる。「ワーッ!スッゲー!」。突然のちん入者に無数の生き物が一斉に騒ぎ出し、飛び交う。そう、コウモリだ。
普通は1本しか背負わない空気タンクも、深い所に長時間潜るテクニカルダイビングの場合、大きなサイズの空気タンクを2本背負う。まだその他にも特別な装備がいろいろと必要だ。
「人の入っていないような世界の洞窟に行くのが私の夢」と話す松本さん。
彼女が働くダビングショップ「なみよいくじら」のオーナー・関藤 博史(せきとう ひろし)さん(33)は、テクニカルダイバーとしても松本さんのよき先輩。2人はこれまでにも互いに信頼のおけるパートナーとして各地の海に潜ってきた。



 ▼ 目指すは日本最大級の海底洞窟「秀ん家ガマ」
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「秀ん家ガマ」の入口


世界でも有数のダイビングスポット、沖縄。松本さんたちは、ここで日本最大級の海底洞窟に潜る計画を立てている。それは、久米島の沖、1キロにある日本最大級の海底鍾乳洞だ。地元のダイバー友寄 秀光(ともより ひでみつ)さんが偶然発見し、発見者の名前にちなんで「秀ん家(ひでんち)ガマ」と呼ばれている。
過去2回の調査では、関藤さんらTDIのメンバーが「秀ん家ガマ」の入り口から270メートルの地点まで到達し、ガイドロープを張ったり。しかし、「秀ん家ガマ」の平均水深は40m近くもあり、タンクの空気は30分ともたない。前回より奥に行くには、体が小さく、空気の消費量が少ない女性ダイバーが適任だということで、松本さんが初めてメンバーに選ばれた。
「ごっついプレッシャーです。でも当日、体調が良ければ行けるんじゃないかな。結構軽く考えてます」と話す松本さん。
先輩の関藤さんも、「彼女の長所は、ノー天気なところかな」と、かえってその性格は好都合と言う。



 ▼ いよいよアタックの日は来たが…
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約2万年前にできた鍾乳洞


ダイビング初日、機材の準備が整った。水中を照らすライト、ロープを張るためのリール、空気タンク2本など、ダイバー一人あたり50キロ以上の重さになる。
いよいよ「秀ん家ガマ」の中に入る。洞窟のいちばん奥を目指していた松本さんだが、途中で潜水を中断し、入口へ引き返してた。
「急に耳抜きが出来なくなって、窒素に酔って頭がボーッとしてきた。このまま行ったら危険かなと思って…」と話す松本さん。
厳しい状況に置かれたことでストレスが大きくなり、ちょっとした動揺が体調にまで大きな影響を与えるのだ。



 ▼ アクシデント!作戦の練りなおし
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夜のミーティング


いったん落ち着きを取り戻した松本さん、今度は快調に進んでいく。鍾乳洞は本来、陸上にしかないが、およそ2万年前このあたりがまだ陸だった頃に鍾乳洞ができあがり、その後、地殻変動によって海底に沈んだとみられている。
松本さんは鍾乳石の間を縫って、一気に240m地点までやって来た。
しかし、この日はトラブルが相次いだ。メンバーが持っていた水中ライトが突然、故障。洞窟の中で灯りを失うことは出口に戻れなくなること、すなわち命の危険を意味する。
この日は、ここまで…。
夜のミーティングでは、翌日どうすれば安全に洞窟の奥まで潜れるかが真剣に議論された。「トップダイバーもサポート隊も、もっと頑張らなくては距離が伸びへん」「300mまではなんとしても行きたい」「そりゃ、行けるものなら行きたいけど…」。
ミーティングは3時間にも及んだ。



 ▼ 360m地点達成!日本最長の水中洞窟を確認
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360mの目標を達成


翌日は空気タンクをこれまでよりさらに1本増やし、3本使うことになった。洞窟の奥で空気が無くなる危険を少しでも減らすためだ。
松本さんたちは、順調に洞窟の奥深く潜っていく。前回調査で到達した270メートル地点を越えると、もうここから先は充分な訓練と経験をつんだ者しか入ることは出来ない。命がけで行く、神聖な領域なのだ…。
30分後、松本さんと関藤さんの二人が笑顔で戻ってきた。
前回の調査からさらに90m奥の360mまで到達できたのだ。しかし、洞窟はさらにその先にも続いていた。
「最高でした。砂地が上がったり下がったりしていて、上からは鍾乳洞のツララが…。誰も行ったことのない所へ自分が初めて行けるなんて、信じられない。うれしいと言うよりハイな気分」と、感激する松本さん。
関藤さんは、「空気の残圧があったのでまだ行けたが、安全第一で…」と、目標達成を喜ぶ。
そして、「秀ん家ガマ」は、水中洞窟としては日本最長であることが確認された。ダイビングの限界に挑むテクニカルダイバー。松本さんの夢は、洞窟の奥へ、また奥へとつながっていく…。



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※再生時間は約10分です。

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一部なみよいくじらで編集を加えています。(ムービー等の追加)